幕末の日本で暮らした欧米人
士が困ったのは、氷が手に入ら
ないことだった。生ものの保存」
にも患者の解熱にも欠かせない
天崎品。はるばる米国から船で
ポストン氷」が運び込まれた一
氷なら国内にもある」と気づいたの一
は中川嘉兵衛という商人。富士山麓の氷
を木箱に詰めて運び出すが、炎天に溶け
てしまう。試行錯譲の末、函館の五稜郭
の氷を切り出し、東京へ海上輸送する。
明治の初め、「函館氷」はたちまちポス
トン氷を駆巡したこんな古い話を持ち
出したのは、新型コロナの収東に向け、
超低温の運搬技術が注目されているから
だ。「マイナス8度。異常「ございま
せん」。欧州から空輸されたワクチンが
病院に届くやいなや、運び手が温度計を
示した▼この先、広く人々が免疫を得る
のはいつか。カギの一つはワクチンを
り運ぶ冷凍インフラだろう。冷凍庫や保
冷箱、ドライアイスは足りるのか。わが
腕に届く時期は、それら冷凍系の品々に
も左右されそうな予感がする▼私たちの一
暮らしは冷やす技術なしでは成り立たな
い。「冷蔵装置が整うまで、刺し身は海
辺の里だけの食べ物だった。多くの人々
は生涯あこがれつつ想像するばかりだっ
た」。書き残したのは柳田国男である。
昭和の初め、内麓でも海の幸を楽しめる
幸福をつづった待ちに持ったワクチン
種が始まった。 即根絶とはいかぬもの
の、いまはその一満たりとも無駄にし
たくない。令和の初め、わが国の冷凍
史に新たな一章を測む好機としたい
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くタイトルを考える