-
Jul
の顔のように直視した。 胸に棲んでいるうさぎが耳をたてた。耳をたてて、校舎のあ
ちこちから聞こえる練習の音をとらえた。
リズムを作る。単純な作業だが、克久にとってこれくらいおもしろい作業は他にな
かった。 基礎練習は相変わらず、祥子と並んで机を叩くだけだ。もっとも、この頃に
なると課題曲と自由曲、つまり「譚詩」と「くじゃく」のパート練習が始まっていた
し、基礎練習のほうもさすがにひとつ打ちだけではなくて、ふたつ打ち、みっつ打ち
とアクセントをつけたものになっていた。それにしたところで、他のパートから見れ
ば、練習と言うより修業みたいな風変わりな様子だった。おまけに、克久は祥子とあ
のまり口をきかない。 陽気な祥子も練習になると黙々と同じ動作を繰り返す。
はたから見て、それがどんなに単調に見えようとも、右手と左手を均等に使って、
粒の揃った音を出すのは簡単なことではなかった。しかし、音の粒が揃うというのは、
それはそれは気持ちの良いものだった。
音の粒が揃うと、身体の血の巡りが良くなる。 克久は心臓が微笑するような感覚が
そこにあるのを発見した。 胸の中でうさぎが耳を澄ましている。ちょうど心臓のあた
りで、耳を澄まして、叩き出される音の粒が揃っているのを眺めていた。
そこには知恵と呼ぶに足りるものがあった。どんな
+
知恵だと言われても、克久には答えられないが、例の左官屋の仕事とは、まるで別の
知恵があった。 克久はもともと、一人でいることは苦にならない性質だ。一人息子で
一人っ子だからかもしれない。百合子も仕事を持っていて忙しかったから、一人でい
ることに慣れたのかもしれない。理由は幾らだって考えることはできるし、解釈はい
くらでもできるが、一人でいられる喜びを教えることは、解釈ではできない。克久は
他の部員とのコンビネーションを必要とするパート練習より、単調な基礎練習のほう
が好ましかった。一人でいることは苦にならないが、基礎練習をしていると、ある喜
びの色を帯びてくる。小さな音の粒が克久の息をしている世界に向かって放たれると
同時に、彼の身体へと染み込んできた。パート練習で自分の役割を早くも意識し始め
ている祥子と克久の違いはそこにあった。
時々、思いがけぬ時に、克久の身体の中からリズムが顔を出す。トントントンと何
かを叩いてみたくなる。夜、風呂に入ろうとしてパンツ一枚になったとたん、不意に、
これだという感じがした。自分のスティックを持って来て、洗濯機をトントンとやっ
た。背筋を伸ばして、この際、パンツ一枚なのは何の問題にもならない。 服を着てい
る時と同じように、リズムに合わせて踵を上げながら、トントントンと叩いた。
ゃ
かかと
「あら、くじ
くとタンシのおけいこ」
金
AM
PILO.
楽
理
t-mat
中高一貫
数:
ミネルヴァのリズム
上田幸先生
数学
上田幸生
atama
英語 2
英
新先生
ふろ
月19
数学
幸
ipa