ステップ2
ひそやかな音に耳澄ます
聴くと いう一つの動詞
読解音と文化のかかわり」
長田 弘
課題|社会に対する提言を読み取る
とりわけ小さな音だ。古語に数多くあって、今日の言葉に数少ないのは、小さな音を愛でる言葉だ。今は小さ
な音がバズ(プーンという音)に、耳ざわりな音にすぎなくなって、日常にあって、ひそやかな音に耳澄ますとい
うことが、心を楽しますものと思われなくなった。心解かれるのは大きな音、それも他の音を圧する音だ。大き
な音ばかりが世にはばかるようになって、日々の表情を伝える音が少なくなった。
たとえば、夏目救5, x%じっしはうひに書きとめた日々の音は、次のような音だ。
(注2)~え2
泥の音。森のなかの雨の音。雨のざぁーっという音。冬の半鐘の音。雨戸をはずして入って逃げた泥棒の足音。
(型m)
夜中に鼠が鰹節をかじる音。襖を閉める音。火鉢の切り炭のぱちばち鳴る音。欄間に釘を打つ音。杉垣のつづく
家から、微かに洩れてくるコトの音。正月に、鼓をかんと打つ音。春の日に、子どもがヴァイオリンを擦る音。
火事の火の粉の飛ぶ音。激しく号鈴を鳴らしながら、馬の蹄とともに到着する(消防の)ジョウキポンプの音。
中
の
(型す)
*青桐の枝を、植木屋が鋸で、ごしごし引いて切り下ろす音。窓の障子をがらりと開ける音。老いた猫の、くしゃ 0
みともしゃっくりともつかぬ、苦しそうな音。大通りをがらがら押されてゆく荷車の音。下駄の歯入れ屋が古い
鼓を天秤棒にぶらさげて、竹のへらでかんかん叩きながら、垣根の外を通りすぎてゆく音。
どんな小さな音だろうと、音は日々のなかにある時代の音だ。激石の書きとめた日々の音のほとんどは、今で
はなくなった音だ。時代のもつ文明の音が、街の音だ。ひとが音にもつ記憶というのは、自分の耳で聴いた時代一