(a) ショウジョウバエの発生過程では, 胚の後部に極細胞と呼ばれる生殖細胞のも
とになる細胞が生じ, メスでは極細胞から卵母細胞が生じる。 メスの卵巣内では,卵
母細胞は体細胞である多数のろ胞細胞に取り囲まれている
ショウジョウバエでは, (b) 背腹軸は卵母細胞が成熟する過程で決定し, この決定
には分泌タンパク質である (c) タンパク質 Aが関与している。 タンパク質 A の
mRNA は母性因子であり、母体の体細胞から卵母細胞に輸送され, (d) 卵母細胞の特
定の領域に偏って分布する。 そのため、翻訳の過程でmRNA をもとに合成されたタ
ンパク質Aは,卵母細胞の一端からのみ分泌され,分泌されたタンパク質Aが受容
体 (以下, A 受容体) に結合することで卵母細胞の背腹軸が決定する。 ショウジョウ
バエの背腹軸が決定する仕組みを調べるために, 実験1を行った。
実験1 発生過程において, 野生型の胚 (正常胚) と A受容体の遺伝子を欠損した胚
(A受容体欠損胚) の極細胞を交換移植したところ, A受容体欠損胚の極細胞を移
植された正常胚から発生したメス(以下, メス1) と, 正常胚の極細胞を移植された
A受容体欠損胚から発生したメス(以下, メス2) は,いずれも正常に発生した
(図1)。 メス1とメス2をそれぞれ野生型のオスと交配したところ, メス1の卵巣
に形成された, A受容体欠損胚から移植された極細胞から生じた卵母細胞に由来
する胚は、全て正常に発生したが、メス2の卵巣に形成された, 正常胚から移植さ
れた極細胞から生じた卵母細胞に由来する胚は, 全て腹側構造のみからなる異常胚
となった。