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18
第
4
町
と名乗った。こんなにもさりげなく、好奇心や物見高さもなしに声をたい
たのははじめてだった
「白樺の樺に島と書いて、かわしまと読むんだ。至剛っていうのは発音しにく *
いだろう。さっさと忘れてくれていいよ。一応説明しておくと、至るに剛力の
剛と書いてみちたかと読ませるのさ。至大至剛っていう孟子のことばだよ。ど
んなことにも屈せず、かぎりなく強いっていう意味。ぼくが生まれたときはま
だ曽祖父が健在で、こんな大仰な名前になった。」
苦笑しながら言う。みちたかというその響きが、見るからに利発て端正な少 "
年の人となりといかにとけ合っていたか、操はことばにあらわせない性分をは
がゆく思った。樺島は、主な教科の進み具合や担当の教師の気質やあしらい方
などを、姿にたがわず端的に説いた。それがどれほど的を射た解析であるかは
いつしかまわりに集まっていたほかの生徒の反応て察することがてきた
わずか十分の休憩のあいだに、操はこの学級の心意気が、樺島という端正でお
気持ちのよい生徒に収紋しているさまを目の当たりにした。彼は、十四歳とい
う年齢の持ち得るかぎりの機知に富み、明朗で麗しく、それらは少年の人柄に
最大限生かされていた。至剛という名前のおよぼす印象は、すらりとした体つ
きではなく、おおらかで惑いのない気立てに尽きる。
樺島は、操が内気て小声であるということを重荷に感じないよう、それとな
配慮してくれた。月並みに「ほら、もっと大きな声をだしてご覧」などと励
ましはしない。皆と活発にまじわるのを無理強いすることもない。そばにいて
始終かばってくれるというやり方ではなく、操が精一杯努力した後で、どうし
ても手助けがほしいと思うときに、必ず手を差しのべるというふうだった
静かなのはいいことだよ。声をはりあげなくたっていい。耳を澄ませば、
くらだって聞こえるんだから。」
樺島のおかげて、操はくりかえした転校の中ではじめて、情けない思いをせ
基本問題
ニ
しらかば
○● 次の文章を読んて、後の問いに答えなさい。
飾り気のない校舎だが、手入れはよく行き届いている。磨かれた窓から、操
を励ますように澄明な青い空が見えた。下駄箱や廊下に運動用具がならんでい
ないのが、ひとまず操を安堵させた。度重なる転校て、早々と校風を見抜く眼
力だけはたけていた
し
しだい
|たり
R。
学校によっては、ボールや体操器具がこれみよがしに廊下へならび、ひとり
ひとりがいかに熱心にそれと取り組んているかを誇らしげにあらわした。操は
小柄で非力なのを気にしている。生徒をひとりもらさず運動に駆り立てる一致
団結の精神には、もっともなじめないのだ
「教室への第一歩は、これまてに経験した緊張や気詰まりと似たり寄ったり
だった。 少しだけどよめき、ひそひそ声に変わる。操は力の抜けた声で、面白 =
みのない挨拶をし、指定された席へおとなしく腰かけた。
しゅうれん
隣あう生徒の好奇心を満たすだけの応答を小声でかわした後は、不慣れな教
科書へ目を落とした。字面を目て追っても、頭へ人ってこない。その後、生徒
たちはざわつくこともなく教室は平静に戻った。操は、またしても取るに足ら
ない生徒だと評価されたことを察した
R。
操は級友たちの顔や名前を覚えるよりも、天井に打ち込まれた鋲の数や、床
の釘穴の数を知るほうが先になるだろうと思った。ほうっておいてくれればま
だいい。不得手な球技に無理やり誘われやしないかと、気が気てない。うまく
ポールを扱えず、もたもたしている我が身の姿を容易に想像できた。
そんな具合だったので、次の休憩時間に声をかけられたときは驚いた。
教科書は、前と同じだったかい、」
その生徒は気さくに尋ねた後で、つけ足すように自己紹介をした。樺島至剛
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