5
次の俳句とその鑑賞文を読んで、あとの各問に答えよ。
三
日の出前五月のポスト町に町に
このまま見ると妙な句である。「五月のポスト」がまず妙だ。「五月のポス
ト」「六月のポスト」などというものがあるわけではない。「町に町に」も妙
だ。「町ごとにポストがある」という意味ではない。これらの箇所には作者
の相当なねらいがありそうだ。
まず、「五月のポスト」だが、これは「日の出前(の)五月のある朝)」
ということだろう。作者はそんな時間に町に出た。「日の出前」といっても
「五月」だ。ほの暗さは残っていても、すでに視界ははっきりしている。作
者の目をとらえたのは「ポスト」。 こんにち町で見かけるような箱型のポス
トではない。円筒形の鉄合金で作られたどっしりとしたポストだ。「町に町
に」とあるように、ポストは一つではない。町角ごとにポストがある。
この句の味わいについて、最もきわだっているのは、ポストの「赤」の色
が、ほの暗さの残る町に鮮烈な点描となっている点だ。ふだんは気にもとめ
ることのなかったポストが、あざやかな色彩で強く作者に意識されたのだ。
わざわざ
」と表現することで、初夏の町のさわやかな感じ、
3 を強く表すことに成功している。
この句は字余りだが、その字余りによる余韻が、日の出前の町をゆっくり
快い気分で歩く作者の姿さえうかがわせるではないか。
はきょう
石田波郷
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