次の文章を読んで、下の問いに答えなさい。
ひょう
その後、何か月かたった二月の寒い季節、また
貧しい夜がやって来た。 花のパリというけれど、
北緯五十度に位置するから、わりに寒い都で、九
月半ばから暖房の入る所である。冬は底冷えがす
る。その夜は雹が降った。私は例によって無理に
明るい顔をしてオムレツだけを注文して、待つ間、
本を読み始めた。店には二組の客があったが、そ
れぞれ大きな温かそうな肉料理を食べていた。 そ
のときである。背のやや曲がったお母さんのほう
が、湯気の立つスープを持って私のテーブルに近
寄り、震える手でそれを差し出しながら、小声で、
「お客様の注文を取り違えて、余ってしまいまし
た。よろしかったら召しあがってくださいません
か。」と言い、優しい瞳でこちらを見ている。 小
さな店だから、今、お客の注文を間違えたのでは
ないことぐらい、私にはよくわかる。
こうして、目の前に、どっしりしたオニオング
ラタンのスープが置かれた。 寒くてひもじかった
私に、それはどんなにありがたかったことか。涙
がスープの中に落ちるのを気取られぬよう、一
さじ一さじかむようにして味わった。フランスで
もつらいめに遭ったことはあるが、この人たちの
さりげない親切のゆえに、私がフランスを嫌いに
なることはないだろう。いや、そればかりではな
い、人類に絶望することはないと思う。
2706
200 65 175 12
PENDAH
houd
CM CH