講義名: AI時代に必要な能力
人工知能(Artificial Intelligence: AI) という概念は1950年代に生まれたが、長らく、小説や漫画、
映画での題材としてのみ注目されてきた。 しかし、2006年に高性能コンピュータに学習能力を付加し
たディープラーニング(深層学習)という機械学習手法が確立され、急速な進化が開始された。)
AI は、 「ビッグデータ」 と呼ばれる膨大なデータを記憶し、問題を解決するための方法 (アルゴリズ
ム)を備え、これによって、 データを観察し、計算し、 様々なパターンを認識する。 そして新たなデー
タが投入されると、それらを解析し、 様々な問題や課題を発見し、瞬時に解決策を示す。 従来のよう
な単純作業ではなく、 高度な判断が必要な作業も高速でこなす。
2016年から17年にかけて、 囲碁の世界トップ棋士に連勝するようになったことで、 AIの高度さに
注目が集まった。 囲碁の勝負をしたグーグルのAI「アルファ碁」は、ディープラーニングの手法を活用し、
対戦当時、 1秒間に数万の手を試し続け、 天才棋士を圧倒した。
最先端の AI である 「アルファ碁」 は、 1000台以上のプロセッサを駆使し、 対戦を重ねた。 2年間
の運用経費だけで、 30億円以上と言われている。 だから、 このスーパー AI がすぐに私たちの暮らし
や仕事に近いところで活用されるわけではない。
しかし、2012年から18年までの6年間で、 ディープラーニングによる処理能力はなんと30万倍
になった。 この進化のスピードからすると、AIが5年後にどんな活躍をしているかは予測すら難しい。
そんな事情もあって、 世界中の情報メディアは 「10年後になくなる仕事、 生き残る仕事」 といった切
り口の記事を数多く発信している。その中には、 運転手や店員、 事務職、 秘書など様々な職業が消え
去ると警告するものが多い。 これから社会に出ていく若い世代は、こうした警告を少し気に留めるこ
とは好ましいが、 多くのAIの専門家は「どの職業が完全に消えるということではなく、 人間ならでは
の能力に欠ける人材が不要になるということ」 と指摘する。 記憶型の学習のみを重ねた人材は、AIに
全くかなわないということだ。
AIの時代にまずものを言うのは、柔軟な思考力だ。 AIはひとつのテーマを緻密に深く追求すること
には、驚くべきパワーを発揮するが、 ひとつの現象を見て、 新たな可能性を発見したり、ひとつの発
見を別のケースで活用したり、といった創造力はない。 この創造力、 独創力の基礎には、論理的思考
力が必要だ。 あるひとつの現象を見た時に、 “なぜあの現象が起こるんだろう” と論理的思考力を駆使
して考え、“もしかして~が原因かもしれない” といった可能性を色々と考える努力を重ねると、 様々
な発見ができる能力が育つ。これを仮説設定力と言う。
またチームの中で、メンバーの能力や魅力を活かし、チームワークで貴重な仕事をこなす能力もAI
にはまねができない。 こうした能力は、思考力に加え、思いやりや質問力を含むコミュニケーション
力を育てることで身に付く。 すなわち、これらは、文字通り「人間力」 なのである。
そして最も重要なことは、 世の中の変化に対応する覚悟だと多くの専門家が指摘する。 インターネッ
トやスマートフォンが、 私たちの生活を大きく変えた以上に、AIやロボットはこれからの暮らしやビ
ジネスを大きく変える。 その中で活躍の場を広げていくためには、 自分の場を守ろうとして変化から
逃げるのではなく、変化に柔軟に対応し、変化を自分の味方にする覚悟と知恵が必要だ。
さらにAIを敵視するのではなく、AIを活用しようとする視点が望まれる。 もちろんAI開発の現場
で活躍できれば、それは刺激的だが、そうでなくとも、 AI を自分のビジネスや生活に活用する方法を
模索すれば、AIはあなたにパワーと知恵を与えてくれるはずだ。
<補助資料>
人工知能とは
「人工知能; Artificial Intelligence」 は、アメリカの計算機科学者、 認知科学者のジョン・マッカーシー
が、1956年に用いた。 彼は初期の人工知能研究の第一人者。
人工知能の定義: 「大量の知識データに対して、 高度な推論を的確に行うことを目指したもの」(人工
知能学会)
機械学習とは
大量のデータから反復的に情報を学習し、そこに潜むパターンを見つけ出すコンピュータの学習パター
ン。 学習した結果を新たなデータにあてはめることで、将来を予測することができる。 利用可能なデー
タの学習量が増加するにつれてアルゴリズムの性能が向上する。
AI活用事例
0000
Web サイトの訪問者数などのデータをAIが自動で分析し、訪問者の管理や Web サイト改善の方法の
提案などを行う。日本の多くの企業がGoogle社のデータ分析ツールをマーケティングに役立てている。
AI時代に消える仕事
AI研究者のオックスフォード大学のオズボーン准教授らは、米労働省のデータに基づいて、今後10
~20年で、米国の総雇用者の約 47% の仕事が自動化されるリスクが高いと2013年に発表し、世界
中に衝撃が走った。また知識中心で、AIに奪われやすい職種として、医師、弁護士、公認会計士の三
国家試験資格まで指摘する専門家もいる。